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シュメール人の横顔 [0101古代オリエント]

メソポタミア文明を生み出したシュメール人の建設した代表的な都市国家遺跡にウルがある。ユーフラテス下流で、1922~34年にギリス人のウーリーによって発掘され、神殿とさせる施設(いわゆるジッグラト)と、多数の楔形文字をしるした文字盤、住居跡などとともに王墓が発見された。研究の結果、前2500年頃のウル第一王朝の王墓であることが判明した。王の遺骨の周りには高価な家具や装身具とともに、多数の殉死者や兵士、牛の遺骨が発掘された。その中でひときわ目を引くのが、「ウルの軍旗」(または「ウルのスタンダード」)といわれる遺物である。ここにはウルの兵士たちの戦いの場面と平和の場面が描かれていると言う。シュメール人は「民族系統不明」とされているのだが、この資料によってその風貌を知ることができる。そこに出てくるシュメール人兵士は、みな一様に横を向き、しかも異様に大きな目と鼻を持っている。「ウルの軍旗」は現在は大英博物館に所蔵されている。2002年度のセンターテスト世界史B追試で出題されたので、それを参考に見てみよう。

uru-standard_p.jpg
ウルの戦車 牽いているのは馬かロバか?(これはウルのスタンダードの戦闘場面の一部)

ウルのスタンダード 「ウルの軍旗(旗章)」は「ウルのスタンダード」とも言われ、瀝青の板に貝やラビスラズリ、紅玉髄が象嵌され、美しいものである。高さ22センチ、長さ50センチの木製の箱の側面に二つの主な場面が描かれており、ひとつは「戦争」の場面、一つは「平和」(または饗宴)の場面と言われている。発掘当初は軍隊の「スタンダード」(旗章)と想定されたが、それは誤りで、楽器の共鳴箱であった可能性が高い。「戦争」の場面では戦車が描かれているが、それを牽いている4頭の動物が議論のまととなっている。馬はまだメソポタミアでは導入されていないからである。一説では捕獲され、訓練されたアジアノロバの一種ではないかという。<参考>『世界の歴史〈1〉人類の起原と古代オリエント (中公文庫)

「戦争の場面」はシュメール人の都市国家ウルの戦争の有様を描いた板で、戦士が行進し、戦車を引いている図が描かれている。そこに描かれた戦士は一様に大きな目に高い鼻を持っており、その独特の容貌が印象的である。ウルは旧約聖書に「カルデア人のウル」としてでてくるところで、イスラエル民族の始祖であるアブラハムの故郷であるとされている。<参考>『メソポタミア文明 ジャン=ボッテロ著 (「知の再発見」双書)

episode シュメール人がパソコンを使っている? 「ウルのスタンダード」については、その「戦闘の場面」「饗宴の場面」についての詳細な紹介と解説が、小林登志子著『シュメル―人類最古の文明 』中公新書 p.115~129 に掲載されている。なお同書でオックスフォード大学の東洋学科によるシュメル文書全文の英訳事業が紹介されているが、同大学のホームページで、なんとシュメール人パソコンを使っているジョークも紹介されている。参照http://etcsl.orinst.ox.ac.uk/index1.htm 

メソポタミア文明シュメール文化-学校の起源世界最古の文字 

次のセンターテストで使用されているのはウルのスタンダードのうち、「平和」(または饗宴)の場面。


【出題】 2002年 センターテスト 世界史B 追試 第2問 問11

次の図は、大英博物館に収蔵されている「ウルのスタンダード(軍旗)」と呼ばれる遺物である。ウルについて述べた文として正しいものを、下の①~④のうちから1つ選べ。

uru-standard.jpg
   

 ① シュメール人のサルゴン1世が建国した。

 ② アッカド人の建てた都市国家だった。

 ③ アッカド人を征服して、初めてメソポタミアを統一した。

 ④ シュメール人が考案した楔形文字を使用した。

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